

—まず田辺さんが現在栽培している野菜を教えてください。
僕は、南あわじ市賀集地区でレタスと玉ねぎを栽培しています。
—ありがとうございます。次に農業を始めたきっかけはありますか?
元々おじいちゃんが、この地で農業を営んでいました。そこに約12年前に移住してきて、農家に転職した形です。
僕は京都で生まれ、小学生の頃から父に付いて行き、おじいちゃんの農作業を手伝っていました。
その頃は、田んぼでのすべての体験が「新鮮で楽しい」という印象しかありませんでしたね。
その後、高校卒業して26歳までバンド活動をしていたのですが、バンドを解散するタイミングで淡路島に移住して農業を継ごうと思い立ちました。
良い思い出ばかりだったので、軽い気持ちで始めましたね。
—なるほど、楽しい思い出のあるおじいちゃんの田んぼが職場になり、働き始めた時の感想を教えてください。
収穫作業しか手伝ったことがなかったので、知らない作業だらけで大変に感じました。
ただ、玉ねぎの収穫作業という一年の中で一番忙しい繁忙期以外は、意外と気が抜けるんだなと。
初めはずっと忙しい期間が続くと思いゾッとしましたが、そういうわけではありませんでした。
メリハリはあるが、種まきから収穫作業まで分業ではなく、すべて一貫して行わなければならない大変な仕事だなという印象でした。
—始めた頃は、おじいちゃんも一緒に農業をされていた?
すでに80歳近い年齢だったので、スムーズに作業ができる状態ではありませんでした。
それでも「3年間はめんどうみたる!」と言ってくれて、おばあちゃんと一緒に僕をサポートしてくれました。
昔かたぎで、言葉ではなく俺の背中を見て学べという感じのおじいちゃんでしたね。
3年ほど経つと、日を追うごとにおじいちゃんが圃場に出てこなくなったんですよ。
ようやく認めてもらえたのかなと感じました。

—やさしいおじいちゃんですね、農家に転職してみて一番難しかったことは何ですか?
年間計画を立てるのが、難しかったです。
作業を詰めると休めなくなるし、変に間隔が開くと作業が思うように進みません。
どれくらいの利益が見込めるのか?生活をしていくために最低限どれくらい作付けしなければならないのか?など約3年間ほど年間計画を立てるのに試行錯誤しました。
—作付けの計画を立てていくのは難しそうです。解決方法を教えてください。
こればっかりは、コツコツと経験を積み重ねるしかなかったですね。
転職した時点で、妻と子供もいたので「とにかく大きい失敗はしないようにしよう!」と心がけてスケジューリングして農業をしてきました。
今思えば、もう少し大胆な選択をとってもよかったのでは?と感じます。
当時は、「一度足を踏み込んだら中途半端には逃げられない、失敗はできない」という感覚がありました。
—家族を持ちながら移住して新しい仕事を始めるプレッシャーは計り知れませんね。農業を始められた頃は機械への投資もかなりされた?
ある程度は投資しましたね。
キャッシュを貯めて機械を購入するというより、ローンを組んで購入する先行投資型で購入していました。
ですが、大きい倉庫があり、トラクターが始めから使えたりと、色々なシーンでおじいちゃんに助けられましたね。
—倉庫があるだけでもかなり助かりますよね。次に田辺さんなりの農業をしていく楽しみを教えてください。
ゼロイチで自由に考え仕事して、結果が出るのが楽しいです。
自分が考えたスケジュール通りに収穫でき、想定した利益が上がる。
それが実現できなければ、原因を検証して来年に繋げていく。
農業はうまくいけば達成感とお金に変わりますし、僕はそのプロセスも楽しめます!
—すばらしいですね。ちなみに確実に結果が出る方法をもう確立されたんですか?
できていないですね、野菜は奥が深いです。
特に玉ねぎは、1年に1回しか栽培できないので…。
そこで大切なのは、良い結果が出た要因のジャッジをミスしないことですね。
気候や肥料の散布量など複合的な要因があると思うので、ひとつの要因を鵜呑みにせずしっかり検証して来年に活かしていくことが大切だと感じます。
そのためには毎年チャレンジをしていかなければならない、それは栽培方法だけでなく販路開拓も同じです。
また天候を知ることも農業は絶対に必要だなと感じて、気象予報士の資格も取得しました。
資材を投入するよりも、気象を熟知して事前に対処していければ、一番コストがかからないかなと感じています。
—気候を知るために気象予報士の資格をとる行動力に脱帽です。「販路開拓も同じ」というお話がありましたが、もう少し詳しく教えてください。
僕は、農業を営む中で「同じ売り方、売り先に依存しては、農業に未来はないのでは?」と感じていました。
そこで、こだわりのある農家の販売先を差別化できないか?と普及センターとデータを取り、資料を作って地元JAにプレゼンし、「GLOBAL.G.A.P(グローバルギャップ)部会」を5人で設立。定めらた高い基準を満たすGLOBAL.G.A.P(グローバルギャップ)認証された農家の野菜は、JAの中でも新しい販路への出荷を実現しました。
しかし販売価格など課題もまだまだたくさんあります。「第三者機関に認定されている」ということを付加価値にしていくためにこれからも僕はチャレンジしていきます!
—市場出荷が主であるJAで、新しい販路を開拓したのはすごいですね。
ありがとうございます。僕が農業を始めた頃、おじいちゃんやおばあちゃん、近所の方などたくさんの方に3年間助けられました。
しかしその人たちは、どんどん農業を辞めています。後継者がいない、そもそも儲からないからやめるという理由が大半です。
「農業は儲かる」というイメージを確立できれば、産地としての未来は明るくなると感じてGLOBAL.G.A.P(グローバルギャップ)部会設立などの行動に繋がっています。
—今後「農業は儲かる」というイメージの確立には、どのような施作が必要だと思いますか?
農家は色々な成功体験を積み、社会は規模が小さい農家を見捨てないことが必要だと思います。
魅力のある産地になる一躍を担うために、技術を確立さて伝えていくことに重点を置くべきだと考えています。
—お客様に選ばれる成功体験を積むために、野菜自体のクオリティも大切だと感じます。田辺さんが栽培する野菜へのこだわりを教えてください。
自然の力でなるべく作るのが一番おいしいのではと感じています。
そこで、玉ねぎもレタスも減肥料、減農薬で育て「ひょうご安心ブランド」の認証を取得しました。
子供が僕の作ったレタスを「おいしい!」と言って食べてくれるんですよ。
とてもうれしいですし、子供が野菜を食べてくれるかどうかが、僕の中でのおいしいの基準ですね(笑)
今後は、ニーズに合わせて、玉ねぎやレタスの栽培をさらに追求していく予定です。もしかしたら栽培する品目もがらりと変わるかもしれません!
—最後にアグリステーションが創設されますが、この場所にどういったことを期待されますか?
出荷するすべての人たちが、販路が拡大して、全体的に売上が向上する場になれば良いなと感じています。
僕もGLOBAL.G.A.P(グローバルギャップ)認証だけでなく、アグリステーションでの出会いやコミュニケーションを通じて、色々な経験やチャレンジをしていきたいですね。